東京芸大副学長の渡辺健二先生の講話と演奏に満員のお客様は興味深く聞き入っておられました。 ご来場いただきました皆様、どうもありがとうございました。
講話の中で渡辺先生も触れておられましたが、ピアノのメカニズムの重要なポイントの一つに"Let off " という仕組みがあります。
ピアノはハンマーが弦を打つことにより発音するのですが、演奏者はハンマーに直接触れることはできず、鍵盤しか触ることができません。
そのため、鍵盤の動きをハンマーの動きに変換するメカニズムが必要になります。
通常、そのメカニズムは「アクション」と呼ばれています。
そのアクションの中に、"Let off" という仕組みが組み込まれています。
鍵盤を押すと、その動きはアクションによって100%ハンマーの動きに変換されます。
鍵盤の動きに連動する"Jack"という部品が、ハンマーの根元に付いている"Roller"という丸い筒状の部品を突きあげハンマーは上昇します。しかし、鍵盤が深さ10mmのボトムに到達する直前にこの連動は解除されてしまいます。"Jack" が "Roller" の下から手前に動いて(逃げて)ハンマーの上昇は止まります。ハンマーが鍵盤の支配から解放されるのです。
この、"Jack" が"Roller"の下から"Escape"する仕組みを"Let off" と呼んでいます。
ゆっくり鍵盤を押してボトムに到達した状態です。 JackはRollerの下から右に逃げています。
もし"Let off" という仕組みが無く、最後まで鍵盤とハンマーが連動していると、ハンマーが弦に接した後も弦を押し続けて弦振動は阻害されてしまいます。
ゆっくりと鍵盤を押しながらハンマーの動きを観察するとこの仕組みがよく理解できるかと思います。
演奏の観点から考えると、ハンマーは最後は自由運動(鍵盤とは遮断された)で弦を打つため、演奏者が鍵盤の底の方で何をしても手遅れ、、、
演奏者は打弦直前のハンマーの動きをリアルタイムで直接支配できないのです。
勝負は「鍵盤の浅い所でどんな弾き方をしてハンマーを弦に向かって打ち放つか、」、、ということが言えるかと思います。
ただ、実際には鍵盤底部でも、鍵盤の深さや、底への到達感、などなど、、、タッチに関しての重要な要素はたくさんあります。
いろいろ複雑なメカが搭載されているピアノですが、この"Let off" は重要なポイントで、演奏者の方々も是非理解されておくと良いかと思います。
「アンプロムプテュ白馬」へご来館のお客様で、このメカに興味をお持ちの方は遠慮なくご質問ください。
実際のピアノを見ながら説明させていただきます。
謎につつまれた奥深い楽器、、、ピアノへの興味は尽きません。。。